法律上の相続分どおりに相続登記をするのなら、相続人の1人が勝手に手続きしても構わないの?『保存行為による法定相続分どおりの相続登記』

被相続人が遺言書を残していなかったり、複数の相続人間で遺産分割ができなかったりする場合に備え、法律は、被相続人に対する生前の貢献度に応じ、一定の親族に相続分を認めており、これを法定相続分といいます。法定相続分どおりの相続登記であれば、もともと相続人間の公平を害する心配がないため、相続人の1人が他の相続人に黙って相続登記を行っても何ら問題がないのです。


共同相続人の1人が勝手に相続登記をしたい場合の登記申請書に書式
共同相続人の1人が勝手に相続登記をしたい場合の登記申請書に書式

亡くなった被相続人様が不動産を所有するのは、もとはといえば家族が増えたからであることが多いのではないでしょうか。『相続登記してnet』にご依頼のお客様の多くも、相続人様が複数いらっしゃる方々(「共同相続」といいます。)が圧倒的に多数であり、相続人様がお一人だけの方々(「単独相続」といいます。)は極々少数派といえます。

 

相続人様がお一人だけであれば、「どのように相続しようか」などと悩むことはありません。

全部その方が相続すればいいだけのことだからです。

その反面、相続人様が複数いらっしゃる共同相続の場合はそうはいきません。

「私の相続分が少ない!」

「もっと相続分が欲しい!」などなど

利害対立が必ずといっていいほど勃発します。

 

そんなとき、亡くなった被相続人様が遺言書を作っていてくれれば残されたご家族は結構救われます。

といいますのも、残されたご家族の皆様は、亡くなった方の遺志ばかりは、さすがに尊重する傾向にあるからです。

 

逆に遺言書がない場合は・・・ないものは仕方がありません。

残された相続人様方で仲良く話し合いをして頂くか、それが無理なら裁判所の力を借りるしかありません。裁判には心理的な抵抗があるのが日本人気質でしょうから、結局、残された相続人様方で話し合いがまとまらないまま、年月だけが過ぎ去っていくことが結構多くなります。

 

このような相続登記を放置するとどうなるのでしょう。

沢山いた相続人様方もどんどんお年を召して、二重三重に相続が発生するのは時間の問題です。二重三重に相続が発生することを数次相続と呼びますが、数次相続になれば、相続人の数がますます増え、しかも相続人同士に面識が殆どないため、話合いはおろか、相続登記書類の収集すらままなくなってしまいかねません。

 

ですから、相続が始まって、共同相続人間で話し合いがまとまらない場合は、

とりあえず法定相続分どおりに相続登記しておくが!!

ということになりそうです。

とはいえ、話合いすらできない他の相続人が、法定相続分どおりの相続登記であっても、協力なんてしてくれるはずがないのでは?と心配になりそうではありますが、そこはご安心を。

 

登記制度は「現在の権利関係」を全国の人々に公に知らせることを目的としています。亡くなった被相続人様の名義のまま放置することは「現在の権利関係」すら示せておらず、登記制度の目的が達せられていない状況となります。法定相続分どおりの相続登記は、登記制度の最低レベルすら維持できない状況下において、少なくとも最低レベルを維持しようとする手続き(「保存行為」といいます。)であり、共同相続人の利益になりこそすれ不利益になることはありません。

したがって法定相続分どおりの相続登記は、共同相続人の1人が他の相続人に黙って勝手に手続しても、何らの法的問題も生じないのです。

  

今一度、このページの冒頭にある、共同相続人の1人が勝手に法定相続分どおりの相続登記を行う場合の相続登記申請書の書式をご覧になって、遺産分割協議が整わず途方に暮れたお気持ちをリセットしてしまいましょう。

さぁ未来への扉を相続登記してnetで開放しましょう!!
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